「インプラントは“第3の歯”」「永久歯の次に頼れる存在」といわれることもありますが、実際に天然歯とどのような違いがあるのでしょうか。構造の違いや噛み心地、そして長持ちさせるためのメンテナンス方法について、歯科医師・岩田幸生先生に伺いました。
まず、インプラントはチタン製の人工歯根を顎の骨に直接埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療です。天然歯のように「歯根膜」というクッション組織が存在せず、骨と人工歯根が直接結合しているのが最大の違いです。
一方、天然歯の歯根と骨の間には「歯根膜」と呼ばれる薄い膜があり、噛む力を吸収するショックアブソーバーの役割を果たします。さらに、噛んだときの感覚を脳へ伝えるセンサーのような働きも持っており、私たちが“噛み心地”を感じるのはこの歯根膜のおかげです。
では、インプラントに置き換わるとどのような変化が起こるのでしょうか。岩田先生によると、「理論的には歯根膜がないため噛み心地が変わる可能性はありますが、実際には多くの患者さんが違和感なく生活されています」とのこと。つまり、日常生活ではほとんど差を感じない人が多いようです。
ただし、構造上の違いによるリスクもあります。天然歯には「歯肉溝浸出液」という細菌の侵入を防ぐ仕組みがありますが、インプラントにはこの防御機能がありません。そのため、感染すると「インプラント周囲炎」という病気を起こしやすく、進行が早い傾向があります。
このようなトラブルを防ぐためには、治療後のメンテナンスが非常に重要です。インプラントはむし歯にならない一方で、細菌が付着しやすい性質があります。自宅でのブラッシングに加え、定期的に歯科医院でプロフェッショナルケアを受けることが理想的です。歯科医院では、専用のやわらかいチップで表面を傷つけないように清掃し、必要に応じてレーザーで炎症部分の除去を行います。
岩田先生は「インプラントは高額な治療だからこそ、患者さんの意識が結果に直結します。日々のケアと定期的なチェックを欠かさないことで、長く健康な状態を保てます」と語ります。
インプラントは見た目も機能も天然歯に近い一方で、感染への抵抗力は弱いという特徴があります。せっかく手に入れた“第3の歯”を長持ちさせるためにも、歯科医との二人三脚でのメンテナンスが欠かせません。日々の丁寧なケアと定期的な診察こそが、インプラントを守る最善の方法といえるでしょう。
